私のパソコン歴(11) : 大学生を振り返って

振り返ってみれば大学時代はとても充実したものだった。 ただ「人より多少プログラミングができる」程度だった自分が大きく伸びることができたと思う。 大学に入って伸びることができたのは何故だろうと考えてみた。

理論を学んだこと

当然といえば当然なのだが、講義を受けることでコンピュータサイエンスの基礎を学ぶことができた。 この分野の最先端を走る研究者たちから直接教わることのできる時間は、とてもかけがえのないものだった。 当時は「これを仕事で使うことがあるんだろうか」と懐疑的なこともあったが、仕事ではその知識が大いに役に立っている。 知識のインデックスを張っておいたおかげで、「これはあの分野に答えがありそう」といった嗅覚が働く。

ともに学ぶ仲間が近くにいたこと

近くに住んでいて同じ志を持つ仲間がたくさんいることは、いろいろなプラスの面があった。

話題が通じる

ソフトウェア関係のニュースが流れるとその話でもちきりになった。 日常会話のジョークでも、「話題のスタックポインタが壊れた」「夜道で相手とデッドロックした」といった話が通じた。 大学で出た課題について一緒に考えることができた。

誘われる

学園祭実行委員会、プログラミングコンテストセキュリティキャンプのチューター、リクルートインターン、Web開発のアルバイト、勉強会の発表。 これらはすべて人から誘われたものだ。もちろんそこで「面白そう!」と飛びついたのは私だが、一人だけでは挑戦しなかったものが山ほどある。

人に教えられる・人から教われる

「人に教えるには自分で理解するより3倍深く理解しなければならない」とは一般的に云われることだが、実際にそうだった。

大学に入って思ったことは、別にそこまで専門分野が好きでもない人もいるということ。 この学類に入ったことを後悔してほしくない、この分野のことを少しでも好きになってほしいと思った私は、最初の勉強で躓いているひとに自分の知っていることを教えた。 最初は自分の知っていることを伝えるのがただただ面白かったが、だんだん全てわかりやすく教えてしまうと相手の身にならないこともわかってきた。

教わる側に回ることも非常に多かった。夜の大学で突発的に始まる数人だけの勉強会や、友人の部屋に行って飲みの席で紙とペンを使って教わることもあった。 宿舎の公衆浴場でのぼせるまで専門の話を聞いていたこともあった。

自分の身の丈を知ることができる

自分の能力がひざ元にも及ばない人に何人も出会うことができた。Linuxカーネル、コンピュータによる証明の形式化、Webデザイン、Webシステム開発スマートフォンアプリ開発プログラミングコンテスト、セキュリティ、プログラミング言語・・・ 自分よりもまだまだ詳しい人がいる、という事実は勉強のモチベーションを大いに上げてくれた。

アルバイトという長い職場体験ができたこと

自分の志す業界にアルバイトとして雇ってもらうことで、趣味と仕事の違いを知ることができた。 もちろん、自分がやる仕事は本物のお金が動く。職場体験といっても緊張感のある体験ができた。 姿勢面で何度も叱られもしたり、感謝もされた。

自分のいまの力を試す機会に恵まれる

学生という身分はなかなかに恵まれていた。 企業からは採用活動の一環としてソフトウェアの無償提供を受けられたり、アルバイトとして雇ってもらえたり、懇親会の参加費を割り引いてもらえたり、 学生相手にやる大きな仕事がやれたりする。 学んだばかりの知識や技術をすぐに生かすチャンスが目の前に転がっている。